あなたならどうする?
信号待ちをしていた時のことだった。
道路は二車線、僕は左側の車線の先頭で青に変わるのを待っていた。
すると、70歳後半と思われるご婦人が、なにやら足を踏み鳴らしながら道路に出てくるではありませんか。
何だろうと見てみると、何やら「紙のようなもの」がヒラヒラと風で転がっていて、それを必死に足で捕まえようとしていたのだ。
しかしご婦人の思いとは裏腹に、「えいっ!」と足を出せば、それをあざ笑うかのようにヒラヒラとすり抜けていった。ご婦人はどこまでも追いかけていく。
信号が変わった。
さすがに諦めるだろうと思ったが、ご婦人は足元しか見ていない。
ヒラヒラ、ヒラヒラと「紙のようなもの」は転がっていく。
ご婦人はそれを追いかけて、ついに右側車線まで出てきた。
僕の車線からいなくなったので、ゆっくりと通り抜けることにした。
いつ風のいたずらで僕の車線に戻ってくるとも限らない。
細心の注意を払い、ゆっくりと通り抜けた。
そのとき、一体何を追いかけているのだろうとチラと見ると、その「紙のようなもの」は「千円札」だった。
確かに追いかける気持ちはわかる。しかし危ない。
僕だったらどうするだろう?
確かに一度は追いかける。
だが信号が変わったら諦めるだろう。少し恥ずかしい思いもある。
しかし、これがもし「千円札」ではなく「一万円札」だったらどうだろう?
一万円はかなり痛い。
赤信号の間に必死で追いかける。
そして信号が青に変われば一旦引き上げる。
おそらくクルマの風圧で、どんどんどこかに飛ばされて行くだろう。
次の赤信号で運良く隅っこに止まっていてくれれば回収を試みる。
取りに行けないところまで飛ばされてしまえば、諦めざるを得ない。
落としてしまった自分を責めるしかない。
一番嫌なのは、飛んで行った先に、誰かに拾われることだ。
「すいません、それ僕の一万円なんで返してください…」
と言えればいいが、あまりに必死すぎるようで恥ずかしい。
それに、もし怖そうな人だったらとても言えない。
「どこに名前が書いてあるんだよ!」と言われたら、なんも言えねえ。
やっぱりまずは落とさないように注意すること。
交通を妨げてはいけない。それよりもまず、自分の命の方が大事だ。
解決策は、電子マネーを活用し、財布には最小限の現金だけを入れておくこと。
読んでくれてありがとうございました。
あなたならどうしますか?