本を通して「こころ」を読む
おはようございます。戸塚です。
今日は、河合隼雄の「こころの読書教室」という本をご紹介します。
著者紹介
著者の河合隼雄氏は、すでにお亡くなりになっていますが、臨床心理学者で、日本におけるユング派心理学の第一人者です。
村上春樹との対談集「村上春樹、河合隼雄に会いにいく」で知っている方もいるかと思います。
登場人物の「こころ」を読む
この本は、著者の河合隼雄氏が選んだ本を紹介しつつ、こころとは何かを解き明かしていくという内容です。
口述記録をもとに書かれているので、兵庫出身の著者の関西弁まじりで話している講義を受けている気になります。
まず各章ごとにテーマがあり、その章のはじめに[まず読んで欲しい本]のリストが記載されています。そして、その本を基にして人間の心のことを考える、という構成になっています。
例えば、カフカの「変身」について、
私などがすごいなと思うのは、これは今、たくさんいる引きこもりの人、それから、家庭内暴力をする人と、ほとんど同じだということです。だから、引きこもりの人でカフカの「変身」を読んで、好きになっている人がたくさんいます。「これが僕や」という感じで。
引用:「こころの読書教室」
とあります。
物語には登場人物がいます。その人物にも小説とはいえ人間なので「こころ」があります。単に物語だけ読むのではなく、登場人物の「こころ」を読むことが大事だと言っています。
「何かを得るには、何かを失わなければならない」
人間ていうのは、ほんとうに大事なことがわかるときは、絶対に大事なものを失わないと獲得できないのではないかなと僕は思います。何かを得るには、何かを失わねばならない。失うのが惜しかったら、やっぱり獲得できない。
引用:「こころの読書教室」
なんでも失うのは嫌ですよね。
でも、あれもしたい、これも欲しいと執着してたら、結局何も獲得できない。
「ほんとうに大事なことはなんなのか」「ほんとうに必要なのか」を考えないといけないということです。
「何かを得るには、何かを失わなければならない」
この言葉を、僕は胸に深く刻んでいます。
「知る」こと以上の体験
そして、最後にあとがきで著書はこう言います。
一冊の本を端から端まで読むと、単に何かを「知る」ということ以上の体験ができる。
引用:「こころの読書教室」
知識を得るためだけに飛ばし読みをするのもいいですけど、一冊の本をじっくり読むことによって得られるものは、「知る」こと以上に得るものがある。
もちろんケースバイケースで、その時の自分に状況にあった読み方をすればいいんでしょうけど、「こういう読み方もあるし面白いよ」ということですね。
★
確かに、本を読んで感情移入はしますが、登場人物の「こころを読む」という目線で読書をしたことがないので新鮮でしたし、本の読み方の幅が広がりました。
ぜひ、読んでみてください。