友情とはなんぞや。
武者小路実篤の『友情』を読んで、思い出した。
高校時代の失恋の話。
★
高校1年の終わり頃、僕には気になる人がいた。
違うクラスの岡子(仮名)ちゃん。小さくて可愛らしい子だ。
当時の僕は、硬派といえば聞こえがいいが、ただのシャイでカッコつけだったので、女の子と気軽に話をすることはあまりなかった。
なので、もちろん岡子ちゃんとも話をしたことがなかった。
高2になり、クラス替えで岡子ちゃんと同じクラスになった。
なのに、ほとんど話すことなく月日は過ぎていった。
俺のバカヤロウ。
★★
ここでもう一人の登場人物を紹介しよう。
高校の同じ部活で仲良くなったトモヤ(仮名)。
高2も3学期に入ったある日、突然トモヤから言われた。
トモヤ「戸塚、いま好きな子いるの?」
戸塚「いないけど。どうした?」
トモヤ「俺、岡子のこと好きなんだけど、でも岡子は戸塚のこと気になってるみたい」
戸塚「ふ、ふーんそうなんだ(ドキドキ)」
トモヤ「もし戸塚がいいなら紹介するよ」
戸塚「お、おーいいけど」
・
・
えらいこっちゃー!!
俺のバカヤロー!
何が「お、おーいいけど」だ!
ありがとうございますだろうが!
カッコつけにもほどがあるぞ!
トモヤ!お前はなんていいやつなんだ!一生友達だぜ!!
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でも、これは序章にすぎない。
最初に言ったよね。失恋の話って。
★★★
その年の冬休み、僕たちはみんなで焼肉を食べ、カラオケをした。
丘の上にある店で、自転車で登ってつらかったのを覚えている。
その場は、高校生らしく楽しくワイワイ盛り上がった。
勝負はここからですよね。
トモヤの役目はこれで終わり。あとは自分がなんとかしないといけない。
休み明けが楽しみだ。
★★★★
どうも初めまして、ヘタレです。
冬休みも終わり、新学期が始まった。
もちろん岡子ちゃんとは同じクラスなので会いますよね。
だけど俺ってやつは・・・
「おはよう」とか「バイバイ」しか言えない・・・
なのに少し前進していると思い込んでいるオメデタイ男。
向こうも自分に気があるみたいだし、焦らずゆっくり行けばいいか。
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時は経ち、3年の春。
トモヤと岡子が付き合った。
僕の相談をしているうちに仲良くなって付き合うことになったみたいだ。
よくある話。
最初はトモヤも岡子が好きだって言ってたし。
そもそも、僕がグズグズしてるのがいけないんだ。
ある下校中のこと、僕は友達と歩いて駅に向かっていたら、後ろからトモヤと岡子が自転車で二人乗り(ダメですよ)で追い抜いていった。
トモヤ「わるい、戸塚・・・」
戸塚「おう、じゃーな!」
その後ろ姿は今でも鮮明に覚えている。
★★★★★
こうして思い返してみると、本当に情けないですよね。
トモヤは自分の思いは諦めて僕に紹介してくれたのに。
何してんだか。
トモヤのことは責められません。
その後、トモヤとは少しギクシャクしましたが、普通に仲良かったですよ。
卒業して別の道に進んで、会うことはほとんどなくなったんですけど、最近友人の結婚二次会で再会して、たまに連絡をとるようになりました。
★★★★★★
武者小路実篤は僕のこの話を知ってるんじゃないか?
『友情』を読んでそう思いました。
読みながら、途中で何度も頭を抱えました。
でも、読み終えたあとは不思議とスッキリしました。
「自分とおんなじようなヤツがいる!」と安心したんでしょうか。
同じような経験がある人は、ぜひ読んでみてください。
ない人は、こんなヤツもいるのかと笑ってください。
僕の人生に残る名作です。
『友情』武者小路実篤