GBを捕まえろ!僕とあいつの戦い
そいつはなんの予告もなく、不意に現れた。
夜、部屋でストレッチをして寝っ転がっていた時だった。
頭上の50cmほど先で、何かがスーーっと動く気配がした。
僕は恐る恐る気配のするほうを見た。
すると、その動く物体は「黒光りしたあいつ」だった。
名前すらも言いたくない。
ここでは「GB」としよう。
僕は震え上がり、悲鳴をあげた。
パニックだ。
どうすればいい?
すぐに二つの作戦を考えた。
- 雑誌を丸めて叩きつぶす。
- ティッシュでくるみ、トイレに流す。
【作戦 1 】は、確実に仕留められるが、潰した後の処理が気持ちわるい。
なので今回は【作戦 2 】を採用だ。
感触がないようにティッシュを何枚も重ねる。
そしてそーっと隅に追い込んで行く。
しばらくは「GB」とのにらみ合いが続いた。
今だ!
僕は勇気を振り絞り、一気に飛びついた。
なんというすばしっこさ。
わずかな隙間からスルスルと逃げ出して行く。
くそっ!次こそは!
なんとかまた隅に追い込み、もう一度飛びついた。
よし!今度は捕まえたぞ!
僕は喜び勇んでティッシュの中の「GB」を覗きこんだ。
サササッ
え?
最悪だ。
せっかく掴んでいたのに、またもや隙間から逃げてしまった・・・
なぜなんだ!
なぜすぐにトイレにいかず、捕らえた姿を見ようとしたんだ!
「GB」は机の下に入り込んでしまった。
そうなってしまうと、いつ出てくるのかわからない。
夜はすっかり更けていたので、これ以上の待機作戦は不可能だ。
仕方ない。
今日のところは休戦し、明日「GBホイホイ」を設置するしかない。
電気を消し、ベッドに入った。
眼をつぶると、カサカサと音が聞こえる。
パッと起き上がり、電気をつけてあたりを見回す。
だが「GB」の姿は見当たらない。
気のせいだ。
なかなか寝付けない。
今にも顔の上を這い歩くんじゃないかと不安になる。
戦場では少しのミスが被害を拡大させる。
時には非情にならなければいけない。
明日は必ず仕留め、安息の日々を取り戻そう。
今できることは、そのために眠るしかない。
★
次の日、仕事で部屋を空けなくてはいけない。
「1匹いたら何十匹もいる」という話を聞いたことがある。
今もこうしているうちに増えているんじゃないか?
帰って部屋を開けると大量に繁殖しているんじゃないか?
そんなことを考えて気が気じゃない。
帰りに「GBホイホイ」を買った。
そして部屋に着くなりすぐ、8畳間に5ヶ所設置した。
万全だ。
最初の数日は、まだどこかでカサカサと動くような気がしていた。
しばらく放置し、もう頃合いだろうと「GBホイホイ」を確かめた。
1つめ、いない。
2つめ、いない。
3つめ、いた!やったぞ!
4つめ、いない。
5つめ、いない。
★★
結局捕えたのは1匹しかいなかった。
こいつがあの時の「GB」ならいいが、油断は禁物だ。
どこかに産卵しているかもしれない。
その時はまた別の作戦を考えるしかない。
しかし、今はひとまず安心だ。
やっと平穏な日常が取り戻された。
やっと穏やかに眠れる。
Fin.